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永遠〜とわ〜 第七話

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―――外も暗くなり、一層明りが光を放つ王室。


◇魂三郎◇

今そこにいるのは魂三郎に咲乱、ほか数人の兵士。

―そしてその前には、アスカ王国国王。

「・・・波江魂三郎を我が王国の国軍軍長に任命する。ついては指揮官としてスケニア国軍長との・・・」

王室に国王の声が低く響く。

国王の話にうなずく以外、任命式の間に魂三郎が顔を上げることはなかった。

無事任命式を終え、二人は並んで廊下を歩いていた。

「軍長任命が一番最後になるなんて歴史上めったにない事だよな〜」

咲乱が魂三郎にからかうように笑いかける。

「・・・ケリはつけてきたのか?」

「・・・・・・」

「その顔だと・・・どうにか逃げてきた、って感じだな」

「・・・うるさいな」

魂三郎は悔しかった。自分がエリザベスから逃げてきてしまったように思えたから。

「・・・」

「・・・・・・」

二人は歩く。お互い口を開く気配がない。

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

((・・・気まずい・・・))

お互いが焦りはじめた所で、微妙な沈黙を破ったのは咲乱の方だった。

「魂三郎・・・明日にはスケニアの軍長とご対面、早速連合軍としての作戦会議だ。・・・お前は余計な事で国事を失敗をするような奴じゃない」

「・・・当たり前だよ」

「おう、それでこそ我が軍の頭だ」

そう言って咲乱が笑う。

「ああ。・・・ありがとう咲乱」

―――そして、すべてを知った王女も、一歩を踏み出そうとしていた。

◇エリザベス◇

魂三郎の消えた暗いテラスにエリザベスはひとり立っていた。

今までの自分が・・・悔しい。

深くため息をつくと、エリザベスは涙を拭いた。

・・・後ろにミミが立っているのには気付いていた。

「・・・ごめんなさい、今は一人にしてね。ミミ・・・」

「・・・エリザベス・・・」

そしてエリザベスはミミの横を通り抜け、ひとりになれる場所・・・自分の部屋へと歩きだした。

ミミの目が泣いたように赤くはれていたのは・・・気のせいだろうか。


・・・パタン。

エリザベスは部屋に入ると、その場に座り込んだ。

・・・いきなりあんな事言われて、理解しろと言うほうが無理だわ。

忘れられるわけないじゃない。

また涙が出てきた。今は、泣くことしかできなかった。考えれば考えるほど、どうしたらいいかわからなくなる。

その時、誰かがエリザベスの部屋のドアを叩いた。

「・・・ミミ?今はひとりにしてと言ったはずよ」

返事が無い。

行ってしまったのか・・・そう思ったその時、ドアが開いた。

「久しぶり、エリザベス」

ドアから顔を出したのはミミではなく、見覚えのある黒髪の少女だった。

「・・・ロコ!?」

慌てて涙のたまった目をこする。

「あ、えっと、ごめんなさい・・・どうしてここに?」

「ミミから色々聞いてさ。あんたの間抜けな面拝みに来てあげたのよ」

ロコはそういって部屋に入ると、ソファに座った。

ロコは王妃の妹の娘・・・エリザベスの従姉妹になる。歳は一つ上で、何と言っても気が強い。

「・・・悪かったわね、マヌケな顔で」

「まぁ。マヌケなのは顔だけじゃないみたいだけど」

「な!?」

もともとこんな性格だとは知っているものの、さすがにいやになる。

「・・・で、何の用があってここに?」

「それよりさ、軍長に任命されたんでしょう?波江。明日にはもう連合軍での会議が始まるとかで」

「・・・ええ、そうみたいね」

「もう会えないんだって?」

「・・・ええ」

「何でそんな事になってるのよ?」

「言われたわ。今回で会うのは最後・・・今までのことは忘れろと。私は国の事を・・・あの人の事を全くわかってあげられなかった」

「ふーん。で、それで?」

「・・・・・・・・・へ?」

「あなたの気持ちはそれだけだった・・・って事?」

「それは・・・」

「彼に会いたくないの?」

「・・・でも、魂三郎は・・・」

もう会えないと。忘れろと。魂三郎の言葉がはっきり残っている。

「エリザベス」

「・・・なに?」

「ばぁ〜か」

「!!」

「それくらいの壁が何よ?あなたには出来ることがまだまだあるのに。・・・こんなんじゃ一国の王女として恥だわ」

「ロコ・・・」

「さぁエリザベス、今するべき事はなにかしら?」

「魂三郎に・・・会いに行きたい」
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