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永遠〜とわ〜 第四話

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「魂三郎!!どういうこと!?説明して頂戴!!!」

「・・・・・・分かりました。ひとまず城へ・・・」

魂三郎はエリザベスに背を向け城の中へと歩いていった。

さっきまでのあたたかい声ではなかった。

「待って!」

エリザベスも魂三郎の背中を追って城へと走った。

その時、城の門へ青年が歩いてきた。着ている服のエンブレムからして、城に仕えている者らしい。

「おい、何かあったのか?」

呆然としている衛兵に尋ねる。

「いや、王女様と波江様が戻られたので、波江様に軍長就任のお祝いを申し上げまして・・・」

青年は一瞬驚いたような表情を見せると、呆れたように溜息をついた。

「お前バカか!波江の話、王女様が知ったらどうなるかくらい見当はつくだろう!」

「は・・・すみません、咲乱様」

咲乱、と呼ばれた青年は、二人の見えなくなった城の階段を静かに見つめていた。

(・・・いずれはこうなる運命だったのか?・・・魂三郎・・・)



―――城内―――



冷たい廊下には、二人の足音が静かに響いていた。

「待って!」

魂三郎の足に、止まる気配は無い。

(この時が来るのは覚悟していた・・・なのに・・・どんな顔をすれば!?)

魂三郎の歩調が速まる。

「魂三郎!?」

(そんな・・・戦だなんて・・・・・・それじゃあ魂三郎は知っていて?・・・・・・そんなはずないわ!)

エリザベスも後を追い早足になる。

「ねぇ!魂三郎!?止まりなさい!」

魂三郎に止まる気配はない。

「・・・・・・」

「どういう事なの?・・・戦争って・・・」

「・・・・・・」

「ミミの話は?・・・心配無いんじゃなかったの?」

「・・・・・・」

「魂三郎・・・嘘だったというの?」

「・・・・・・っ!」

拳を握り締め、魂三郎は立ち止まった。エリザベスは勢い余って魂三郎の背中にぶつかり、うしろへ座り込んだ。

「きゃ」

「!!っすいません、お怪我は・・・」

条件反射で、魂三郎は思わずエリザベスの顔を覗き込んだ。

「エリザベス・・・様?・・・・・・!!」

エリザベスの白い頬に大粒の涙がぽろぽろこぼれ落ちる。

「嘘でしょう?戦だなんて・・・」

「・・・・・・っ」

魂三郎はうなずいてはくれない。

「・・・もう一緒には出掛けられないの?」

「それは・・・」

「・・・私がこんな風に転んでも、駆け寄って心配してはくれなくなるの?」

「エリザベス様・・・」

魂三郎はエリザベスから目をそらす。必死に耐えようとしている。

「もう会えなくなるの?・・・もう・・・あなたに触れられないの・・・」

「エリザベスっ!!!」

遮るように名前を叫ぶと、魂三郎はひざまずきエリザベスの手を握った。

その手が、肩が、震えている。

「必ず・・・戻ってくるから・・・生きて・・・」

声までが震えている。

―――情けない。

「魂三郎・・・泣いてるの・・・?」

――その時だった。

「王女様!どうかなさいましたか!?」

「エリザベス王女!何事ですか!?」

「波江様!エリザベス様に何かあったのですか!」

さっきの魂三郎の声を聞いて、心配した通り掛かりの使いが数名駆け付けたのだった。

二人が座り込んでいる廊下の奥からも魂三郎の声を聞きつけた使いたちが走ってくる。あっという間に二人は囲まれてしまった。

「いや・・・これは・・・(汗)」

少しずつ増えていく人だかりに二人は慌てた。どう説明をしていいのかもわからない。

すると、二人の反対側・・・城の入り口のほうから、また誰かが歩いてきた。

「みんな!少し騒がしいぞ!」

『!』

その声に、廊下は一気に静まった。

「王女様と波江の仲だろ?二人きりにしてやれや」

そう言って、涙も引っ込んでしまった二人に軽く笑いかけたのは・・・さっきの青年、咲乱だった。
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