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永遠〜とわ〜 第三話

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(あったかくて気持ちい〜。それにいいにおい。・・・なんか安心する。って・・・・・・・・・ん?)

パチッ

「キャ〜、ご、魂三郎!?」

「やっとお目覚めになられましたか」

「ええ。・・・じゃなくて、どうして私があなたにおんぶされてるの!?」

「エリザベス様が眠ってしまわれたからですよ」

「でもだからって、魂がおんぶする必要はないじゃない!!」

「王宮から馬車を呼ぶとなると、時間もかかります。それに御者や馬にとって、それは無駄な労働です。私という足があるのですから。それもエリザベス様は、城の者たちに迷惑をかけてまで馬車でお帰りになりたかったのですか?」

エリザベスの必死の抗議にも耳を貸さず平然とした口調で魂三郎は言った。

「別に私はそんなつもりで言ったんじゃ・・・」

そこまで言われてしまっては、抗議をすることもできない。

(それに照れ隠しであんなこと言ったわけだし・・・。本当は嬉しかったり・・・・・・)

そしてそんなことはとうに承知している魂三郎である。

(まったくミミは・・・)

エリザベスをおんぶして帰れと言ったのはミミである。

(気を遣ってくれたんだろうけど・・・)



(話すことがないと、気まずいじゃないか!!)



魂三郎がそんなことを思っているなどとは露とも知らぬエリザベスである。

一人幸せを感じていた・・・が。

「もうそろそろ着きますよ」

その一言で、幸せな気分も吹き飛んだ。

(このままお城に戻ったら、また魂三郎はただの護衛に・・・)

そう思うと、胸が苦しくなり、魂三郎の首に回した手に力を入れた。

グッ

「エ、エリザベス様!?く、苦し・・・い・・・・・・」

腕の力は弱くなった。しかしどうも様子がおかしい。肩口が濡れているような気が・・・

それの意味することに思い当たり、魂三郎は慌てた。

「エリザベス様!?どうかなさったのですか!?」

「・・・・・・・・・・・・」

「エリザベス様!?」

「ねえ、魂三郎」

「はい・・・」

「私に敬語を使うなといったわよね」

「は、はい・・・すみません。ですが仮にも一国の王女に対して・・・」

魂三郎の言葉を遮るようにエリザベスは言った。

「おろして・・・」

戸惑いながらも、魂三郎はエリザベスを背中からおろした。

「ねぇ、私のことを'エリザベス'と呼んで」

「エ、エリザベス様・・・」

「'様'なんてつけないで」

「・・・・・・」

「これは王女としての願いではなくて、私個人の願いよ。お願い」

「・・・・・・エリザベス・・・・・・」

エリザベスは胸が温かくなるのを感じた。

「魂三郎・・・、私・・・・・・」

「あっ!!エリザベス王女様!波江様!!お帰りなさいませ」

「・・・・・・・・・・・・」

突然現れた衛兵に、二人は驚きのあまり、声が出なかった。

「あれ?どうしたんですか?大丈夫ですか?」

そして二人はこの後、息をするのさえ忘れてしまうほどの衝撃を受けた。

「あ、そういえば波江様、今度の戦の我が国の軍隊の軍長に任命されたとかで。おめでとうございます」

「「!!」」

「いやあ、やっぱり波江様のような素晴らしい方は、軍長のような・・・」

魂三郎が遮るように叫んだ。

「一体そのような話がどこで!!」

「な、なんでも今日の午後から行われた臨時の会議で決定したそうで・・・。まだご存知では・・・」

「ああ」

「まあ、何はともあれおめで・・・」

「魂三郎!!どういう事!?説明して頂戴!!!」

「・・・・・・分かりました。ひとまず城へ・・・」

エリザベスと魂三郎の運命を巻き込んだ歴史の歯車が、今静かに回り始めようとしていた・・・・・・
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