永遠〜とわ〜 第一話
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ここはとある王国、名は「アスカ」。日差しのあたたかな休日の午後。街はにわかに活気づく。 とある雑貨屋ではしゃいでいるのは、長い金髪に緑色の目、すらっとした体型で、まるでフランス人形のような白い肌の少女。 そしてその隣には漆黒の髪と瞳、少女よりも背の高い純和風の青年。 その街はさまざまな国の人々でにぎわっているのだが、その二人が並んで歩いているとひときわ目立ち周囲の注目を集めた。 少女は店から出ると大きく背伸びをして街の広場へ向かう。 「やっぱり街の雰囲気って暖かい気がして好きだわ」 「久々の外出許可ですからね。今日は楽しんでくださいね」 隣を歩く青年は至って真面目に少女に敬語を使う。 しかし少女はそれに不満な様子だ。 「せっかくの外出許可に敬語を使うのはいやみか何かかしら?」 「いえ。国王の命令ですので。」 この少女は国王の一人娘、エリザベス王女なのである。 青年の名は、波江 魂三郎(なみえ ごんざぶろう)。 どうやら王女の護衛らしい。 「さあ、広場へ行きましょう。今日はミミも広場にいますから」 魂三郎はにっこり笑って言う。 王女もつられて笑う・・・様子はない。 下を向いて何か考えている様子だったが、思いついたようにいきなり顔を上げた。 「じゃあこうしましょう?いますぐ敬語を使うのをおやめなさい。 これは王女直々の命令よ。ね?」 エリザベスは得意げに言うと、広場へ行くべく、走り出した。 「ほら!置いてくわよー♪」 「・・・しかし・・・」 魂三郎は納得していない様子で、王女の後を追いかけた。 大通りを抜け細い道を少し行くと、街の広場へ出る。 広場の中心にある噴水の所に、誰かがいるのが見えた。 「ミミーーーー!!!」 エリザベスはいつになくご機嫌な様子である。 ミミ、と呼ばれるその人は、歳はエリザベスと同じくらいで、背は少し低く、髪は日の光で栗色に輝いて見える。 「ベス〜!あんまりはしゃぐと危ないですよー」 そんなミミの声が聞こえているのかいないのか、エリザベスは足下の石段に見事につまずいた。 「きゃ」 危ない!と目をつむったとほぼ同時、倒れかかった体は、ぐいっと逆方向に引き寄せられた。魂三郎である。 「・・・気を付けてくださいよ」 魂三郎の声に目を開ける。ぽかんとして逆さまの魂三郎を見上げる。 「あ・・ありがとう。ごめんなさい。」 「まったく・・・なんのための護衛ですか。」 魂三郎はあきれた様子で苦笑いする。と、エリザベスはあることに気がついた。 「魂さん敬語使ったでしょう」 「あ」 二人は何故かおかしくなって、笑った。 「相変わらずお二人仲がよろしいですね♪」 二人の後ろからミミが声をかける。 思わず二人は離れる。ミミも相変わらず、ニコニコして二人を見ている。 「お久しぶりです♪」 満面の笑みのミミに対し、魂三郎はすっかり黙ってしまった。 魂三郎が口を開く様子はない。エリザベスは取り直すかのように言った。 「そっそういえば今日はミミのお店に連れていってくれるんでしょう?」 ミミは穏やかな性格ながらも少し前までは城で男にも劣らない護衛だった。 今は、城で国営事務の仕事をしながら、通りのはずれに小さな喫茶店を開いている。 「もちろん歓迎ですよ。今日は話したいこともありますし…。」 「話したいこと?なあに?」 エリザベスはミミの顔をのぞき込む。 「歩きながらっていうのもなんですし、着いてから話しましょう」 二人はミミの案内で大通りへ向かった。 今日これから、ミミが何を話すかも、 そしてそれが二人に関わる大きな変化の始まりだとも知らずに…。 |