『happy』



 「どうした?」

 隣に座っていた彼の肩に頭を預けた。そして彼が、ちゃんと今ここにいることを実感する。二人で見ているドラマでは、恋人に先立たれた主人公が一人涙をこぼしていた。

 「良かったなって思って」

 「何が?」

 このシーンに、私の言葉はふさわしくなかった。彼が怪訝そうにするのも無理はない。

 「あなたがここにいて、私の隣にいてくれて良かったなって」

 「ああ、そういうこと」

 ドラマの主人公には悪いけれど、私が彼女じゃなくてよかったなと思ってしまう。隣に大切な人がいてくれて良かったなと思ってしまう。私と彼女を比べて、今の自分の幸せさを感じようとしてしまう。

 それは、卑怯なことかもしれないけれど、仕方のないこと。そしてやはり思ってしまうのだ。



 ―幸せだな―と



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